2024.10.08
離職率を激減させて売上を好転させたサイボウズの事例
離職対策から見えた社員の幸せと売上の好転
サイボウズは、社長の青野慶久氏が、幸せな会社づくりのためにいろいろと活動をされているIT系企業です。
昔は離職率が高かったそうです。離職率が高ければ、人を補充して教育しなければならないので非常にコストがかかります。だから辞めていかないような会社にしなければならない、と当時の青野氏は思いました。そのころは、特に社員を幸せにしようなどとは思わなかったとのことです。
社員が辞めない会社をつくるためには、辞めたくなった社員の意見をとにかく聞いて、まず辞めたくならない制度をつくろうとしました。
週休3日にしてほしいという人には、週休を3日にする(もちろんその分の給料は下げますけれど)。残業したくない社員に残業はなし。子育てのための育児休暇が3年ほしいという人がいたら3年の育休を与える。友人の起業を手伝いに行きたいが、軌道に乗る3年ほど後にまた戻ってきたいという人にも戻ってこられる制度をつくる。
とにかく社員のさまざまな要望に応じて種々の制度をつくっていくと、離職率は急激に下がったそうです。
同時に、kintone(キントーン)というクラウドサービスが当たって売上も伸びています。離職率が下がっていくカーブに反比例して売上の伸びていくカーブを描くようになりました。社員を幸せにすれば社員は生き生きと働くようになって、結局売上も伸びることの証明です。
人々を幸せにするために何をすべきかという発想がもたらす新たな競争力
サイボウズについては、もう一つ感動した話があります。
同社がクラウドサービスで業績を伸ばしはじめたときに、グーグル(Google)がクラウドに参入してきました。グーグルが参入してくれば、サイボウズのような小さな会社は吹き飛んでしまう。しかし、グーグルの参入を阻止する手立てもなかったため、会社が潰れたらもうこの仕事もやめようと思ったそうです。ところが、グーグルが参入してきても負けませんでした。
GAFAは、利益を上げることを第一目的としてビジネスモデルを構築しています。
それに対してサイボウズは、働く人がより楽しく幸せに働くために役立つことを常に第一に考えている会社です。したがって、クラウドサービスの内容も、利益を上げるための発想ではなく、人々を幸せにするために何をすべきかを発想の基本としています。
この結果、サイボウズの商品を、グーグルは真の意味で真似することはできない。そう気づいたら、グーグルは怖くなくなったそうです。
従来型の、利益を上げて巨大化するという考えではなく、お客様や自分たちの幸せを本気で考えるというビジネスモデルにもとづいて考えれば、GAFAのような巨大企業にさえ負けないことを、サイボウズは示したのです。
もちろん、会社としてグーグルに勝ったわけではなく、あるクラウドサービスではグーグルに負けずに終わったという話ではありますが、日本の可能性を感じる逸話です。
社会とお客様と自分たちの幸せを第一に考えることにより、いままでにない新しい発想が出てきて、そこから生まれるビジネスモデルも基本的に欧米のものとは違う競争力を持つのではないか、という示唆が得られます。
ウェルビーイング経営を進めることによって、いまは小さくても、結局のところ長期的利益を上げることが可能になるのです。
ですから、まず「ウェルビーイング第一」に特化して、本当にお客様や社員が幸せになるにはどうすればよいかを徹底的に考えることから始めていただきたいと思います。そうすれば自ずと答えに行き着くでしょう。
儲かるビジネスモデルを求めて、ウェルビーイングという流行りを利用しようとしても、本来の長期的利益には結びつかないと思います。いったん利益を忘れてウェルビーイングを中心にすべてを考える。その結果、これまで述べてきた会社は安定的に利益を上げています。これらの例に学べば、真にウェルビーイング第一の会社をつくることができるでしょう。
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