2024.08.09
「関わる人々を本気で幸せにしたい」コマニー株式会社のウェルビーイング経営への挑戦
「1億人のWell-being向上」を目標に掲げるコマニー株式会社
コマニー株式会社は、パーティション(間仕切り)の専業メーカーとして、オフィス空間や工場、病院、学校などの様々な「間」の価値を創造しています。
同社は「企業は世の中の幸福に貢献するために存在すべきである」という信念から、ウェルビーイング経営へと舵を切りました。その一環で2024年3月に前野マドカが社外取締役に就任し、ウェルビーイング経営のご支援をさせていただくことになりました。
今回は、2030年までに「1億人のWell-being向上」を目標に掲げているコマニー株式会社の取り組みとその変遷、そして未来への展望について取締役 専務執行役員の塚本直之 氏にお話を伺いました。
「間仕切りメーカー」から「間づくりカンパニー」へ
コマニーは創業以来、空間を効率的に活用し、働く人々の快適さと生産性を向上させることを使命としてきました。しかし、近年では物理的な「間」だけでなく、人々の心の「間」も大切にすることが企業の持続的な成長に欠かせないと考えるようになりました。
間仕切りとは一見、間(ま)を二つに分ける物ととらえがちですが、大切なのはそれによって新たな「間」を生み出しているということです。
ですから間仕切りの本当の意味は、間を区切ることではなく、「間」をつくることであると私たちは考えています。
私たちは、「間」とは「二つ以上の要素がある場合に生成される関係性」、そして「間」をより良い方向に整え、すぐれた「間」を生成することを「間づくり」と定義し、その可能性を追求しています。
予防医学研究者の石川善樹さんは、ウェルビーイングを「いい間」と訳されました。
「間」とは関係性であり、人と人の関係性はもちろん、働く空間・制度・システムや設備など、あらゆるものは関係性で成り立っています。この関係性をいい状態にすることが、人間の本質的な幸福につながると考えています。
「Well-beingな工場を自分たちで作る」 間づくり研究所を設立
コマニーが「間仕切りメーカー」から「間づくりカンパニー」となることを目指すにあたり、「間づくり」を実践する母体として「間づくり研究所」を2023年4月10日(よい間の日)に設立しました。
間づくり研究所では、コマニー社員全員が研究員として「すぐれた間づくり」を追求しています。間づくり研究所の活動として進めている間づくり研究の一環で、工場で勤務する社員が手を挙げ、「Well-beingな工場を自分たちで作る!!」と宣言し、よい職場環境を創るさまざまな取り組みを行っています。
あるチームでは工場内のコミュニケーション活性化のためカフェ等のコミュニケーションスペースを作ったり、おもてなしを研究して、工場見学に来られた方に自社の取組みをより楽しくご理解いただくためのプレゼンテーションに活用しています。
社員が ”自分ごと“ として「いい間づくり」を追求
間づくり研究所を設立したことで、社員がやらされ感ではなく、自分たちの職場に誇りを持って「自分ごと」として楽しく取り組めているのがとてもよかったと感じています。
自己肯定感を高める社員同士の対話
コマニーのウェルビーイング経営で目指す重要な成果の一つは、社員の自己肯定感の向上です。
社員数1,400名を超えるコマニーですが、毎月開催される全員参加の研修や、グループで行われるウェルビーイングチャットチャレンジなど、社員同士の対話を重視しています。
仕事のこと以外でも何でも話せる関係性を構築することで、お互いを知り、大切な存在としてそれぞれの価値観を認められる土壌が形成されてきました。
コマニーのウェルビーイング経営の礎(いしずえ)を築いてこられたプロジェクトメンバーの皆さんにもお話を伺いました。
社員同士の対話を続けてこられて感じた変化について教えてください
-私が参加した当初はウェルビーイングの研修ということで、何か役立ちそうなことを教えてもらおうというスタンスでした。しかし、幸せは誰かに教えてもらうものではなく、自分がどうしたいかが一番大事だと気づくことができました。それに気がついてからは、部下への仕事の教え方も、相手がどのように成長したいと考えているのかを尊重しながら指導するように変わってきました。何より、自分の人生をより前向きに、幸せに生きたいと思えるようになりました。
-3人1組のウェルビーイングチャットチャレンジを2022年から始めて、今でも月1回で続けています。対話を続けることで相手との信頼関係ができて、自分が感じたことをありのままに伝えられるようになりました。あるとき自分の誕生日に手書きのメッセージをくれて、自分を想ってくれる人がいるんだと実感できて、自己肯定感がとてもあがりました。
-仕事がひと段落したあとには、その日の感想をひとりずつ話してもらう場を設けるようにしています。チームメンバーがどんな気持ちで仕事に向き合っているのかを知ることができて、自然とお互いをフォローしあう関係性がつくられているように思います。
-「幸せに結果を出す方法を教えてください」という姿勢では結果が出なかったと思います。自分たちで考えて、腹落ちして行動するからこそ、結果が出るものだと感じました。いまでは対話のなかで「自分たちの幸せ」について話す機会が多くなりました。
ウェルビーイング経営へと舵を切った理由
持続的に成長する会社を目指しウェルビーイング経営へと舵を切ったコマニーは、2022年7月に上場を廃止し、より機動的な企業経営ができる体制へと変わる大きな決断をしました。
本社工場を訪問した翌日、私たちは車を走らせ、鳥たちの歌声と木漏れ日が清々しい豊かな森へ場所を移し、コマニーがウェルビーイング経営を志した経緯についてお話を伺いました。
ウェルビーイング経営に欠かせない「本音の対話」
私がコマニーに入社したのは2010年でした。その頃から毎朝朝礼を行っていましたし、理念が書かれた手帳の読み合わせも行っていましたが、もっと仕事のなかで喜びや悔しさを共有して、お互いに本音と感情を出しあいながら仕事ができたらいいなと思っていました。
これからのコマニーの経営をどうしていくかを創業家のメンバーと議論していたころ、経営の学びのために塚本家の4人で2018年から盛和塾で学び始めました。
盛和塾で企業経営における人間性と幸福の重要性について、同じ志を持つ経営者たちと対話するなかで「企業は世の中の幸福に貢献するために存在すべきである」という信念にたどり着きました。そしてウェルビーイング経営にはお互いの本音を出し合いながら対話することが欠かせないと気づいたのです。
今では、経営メンバーの塚本家4人で、いま気になっていることややりたいこと、感じていることを月に一回、3時間かけて話す「4T会」という対話の場を設けています。お互いに情報収集するなかでこれはすごい、と思った話をシェアすると、それ来週からやってみようよと、重要な意思決定がどんどん進むようになりました。
4T会をやってみて感じたのは、一見関係性が近そうな人でも、言いたいことを言える機会は意外に少ないということです。
ですので、私生活も含めて気づいたことや、今やりたいと思っていること、自分の精神状態もシェアできる「間づくり」がとても重要だと感じています。
対話を継続すると経営メンバーがいまどんな状態でいるかが分かるので、常にベクトルが一緒の同じ気持ちで意思決定できている実感があります。
これがコマニーのウェルビーイング経営の原点になっています。
全社員での月一回の対話の場
コマニーでは社員1,400人が全員参加する、月に一度の対話の場を設けています。
業務時間中に工場を止めてまでよく対話の時間を作れますね、と驚かれることがあります。
生産性と効率の指標だけを重視していた時代ではとてもそのような決定はできませんでしたが、幸福学の研究によると幸せな社員の生産性はそうでない社員よりも31%高く、創造性が3倍になるというお話を聴いて、私たちが目指そうとしていることはやはり間違いではないと思うことができ、重視する指標を社員の幸せに入れ替える決断をしました。
その決断ができた理由は、創業家の経営メンバーが常に本音で対話を続けていて、コマニーが世の中の幸福に貢献するために何が大切か、短期目線でなく長期目線で経営陣の気持ちを一つにできていたからだと思います。
当初はこの決定に反対する人もいましたが、やはり本音で対話を続けて少しずつ共感を増やしていくことが大切だと考えています。
これからの展望はどのようにお考えでしょうか?
マドカさんを社外取締役としてお迎えすることで、社員の自己肯定感をさらに高めるための取組みを行っていきたいと考えています。
コマニーには「成長・貢献・友愛」という大切な価値観があります。社員一人ひとりが成長し、会社に貢献し、仲間と友愛の関係を築くことが、企業の持続的な発展につながると信じています。特に「友愛」の精神は、社員同士の信頼関係を築く上で欠かせない要素です。
「成長・貢献・友愛」を体現するために、成長を支援する研修プログラムや、社員同士で会社への貢献を評価する仕組みを導入したり、互いに支え合って協力する文化を育むチームビルディング活動や、定期的な社内イベントを開催しています。これらの活動を通じて、社員同士の絆を深め、社員が自らの働く環境に誇りを持って、より幸せに働いてもらいたいと考えています。
一人ひとりが輝きながら自分の人生を歩んでいる、コマニーはそんな仲間が集まった会社でありたいと思っています。
以上、取締役 専務執行役員の塚本直之 氏にお話を伺いました。
コマニーの持続的な成長と社員一人ひとりの幸福を両立させるウェルビーイング経営への挑戦はこれからも続きます。
前野マドカは社外取締役という立場から、コマニー社員が自己肯定感を高め、生き生きと輝くための支援を行ってまいります。
創業家である塚本家のリーダーシップと、「成長・貢献・友愛」の価値観を体現するコマニー社員たちによる「関わる人々を本気で幸せにする」挑戦をこれからもご期待ください。
経営者や人事担当の皆様のお取り組みのご参考としていただけたら幸いです。