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2023.07.10

【LCA国際小学校】先生のウェルビーイングをダイアローグカードで実現

LCA国際小学校 HAPPY ワークショップ ダイアローグカードをつかった Well-being な学校づくり

LCA国際小学校を運営するLCA国際学園・山口紀生学園長(左)と前野マドカ

 

 

世界で活躍する「日本人」を育てる小学校

F1レーサー角田 裕毅(つのだ ゆうき)
F1史上最多の優勝回数を誇るルイス・ハミルトン、フェルナンド・アロンソといったレジェンドたちと肩を並べる日本人選手。
 
F4でデビューしたのが2018年。驚異的な成長で勝ち星をかさね、その3年後には2000年代生まれで初のF1ドライバーとなる。
 
スピンやパンクといったトラブルのプレッシャーが襲うなか、強靭なメンタルを保ち続け、持ち前の知性とレース運びで観客に感動をあたえる。
 
弱冠22歳ながら、スタッフと堂々と意見を交わす姿に、同僚は彼のことを「意欲的かつクレバー、地に足のついた好人物」と評価する。
 
角田選手のように世界で活躍する人物は、どのような幼少期を過ごしていたのだろうか。
 
春暖の喜びを惜しみなく与えた桜が落ち着く季節、わたしたちは角田選手の出身校であるLCA国際小学校を訪れ、山口学園長にそのヒントを聞いた。
 
 
 

国際人としての感性を育むLCA国際小学校

LCA国際小学校 HAPPY ワークショップ ダイアローグカードをつかった Well-being な学校づくり

LCA国際小学校は、2008年に神奈川県相模原市に開校した「日本初」の株式会社が設立した認可小学校。 小泉内閣が推進した「構造改革特区」制度によって実現した。 国語以外の授業はほぼすべて英語で行われ、教師の半数は外国人のネイティブスピーカー。「日本初」と「日本唯一」の称号を多く持つユニークな小学校だ。

 
LCA国際小学校

教育理念として「国際人を育てる」「考え、感じる力を養う」「個性を活かす」を掲げている。先生のウェルビーイングも大切にされており、この日は入学式前で繁忙期のはずだが、イキイキと楽しそうに働かれているのが印象的だった。

 
LCA国際小学校

LCA国際小学校の子どもたちは、日本人としてのアイデンティティを大切にしながら国際人としての感性と表現方法を学ぶ。

 
 
 

「日本の教育を変えたい」山口学園長の教育にかける想い

山口学園長が公立小学校の教師をしていた時代、「これをしなさい」「これはやってはいけない」という画一的でルールの多い教育方針に限界を感じ、「人間教育によって日本の教育を変えたい」という思いから1985年に私塾を立ち上げた。
 
当初は学習指導に加え、アウトドア活動を通じて達成感を育む教育を行っていたが、アメリカへホームステイに行ったとき、子どもたちがあまりに英語が話せないことに危機感を覚えたという。
 
このままではこの子たちが大きくなったとき、世界の人々と対等に渡りあえないかもしれない。
 
この経験から、国際人としての感性と英語教育に力をいれる現在の教育方針が確立された。
 
本当の意味で国際人となるには、日本人の誇りをもつことが重要だと確信していた。
 
そのため、授業には日本の歴史や茶道・華道を取り入れ、伝統文化を通じて日本人のアイデンティティを育むことを重視した。
 
LCA国際小学校は、「人を育てる」という永遠のテーマに真摯に向き合う教育者の「想い」がカタチとなった学校だ。
 
 
 

先生がウェルビーイングであることが大切

山口学園長は、子どもたちの「自己肯定感」や「湧き上がる意欲」を育てるために、先生自身がウェルビーイングであることが大切だと考えた。
 
幸せは伝染するというイエール大学の研究結果がある。
 
先生が幸せだと、子どもたちやその家族にも幸せが伝染し、自分が大切な存在であるという自己肯定感が育まれ、何事にも前向きになれる。
 
これからの時代を生きる子どもたちに寄り添い、心を育む教育を提供したいと考えた山口学園長は、先生向けのウェルビーイング研修を行うことを決心し、この日、ワークショップのために約40名の先生が一堂に会した。
 
 
 

ウェルビーイングな状態を育む幸福学と幸せの4因子とは

前野マドカ LCA国際小学校

 
人はどのようなときに幸せを感じるのか。
 
慶應義塾大学が行った日本人1500人を対象にした調査データの解析の結果、幸福感と高い相関関係にある4つの因子が明らかになった。
 
【第1因子】自己実現と成長の因子(やってみよう因子)
  -夢を叶えた人は幸せ
  -夢や目標を持っている人は幸せ
  -自分の強みを自覚し成長している人は幸せ
 
【第2因子】つながりと感謝の因子(ありがとう因子)
  -あらゆることに感謝する人は幸せ
  -利他的な人は幸せ
  -多様な友人を持つ人は幸せ
 
【第3因子】前向きと楽観の因子(なんとかなる因子)
  -自己受容できている人は幸せ
  -楽観的でポジティブな人は幸せ
  -細かいことを気にしない人は幸せ
 
【第4因子】独立と自分らしさの因子(ありのままに因子)
  -人の目を気にしすぎない人は幸せ
  -自分らしさを持っている人は幸せ
  -自分のペースを守る人は幸せ
 
 
これら4つの因子を満たすことで、人は幸せを感じることができるという。
 
講義では、4つの因子のなかでも「生きがい(第1因子)」「つながり(第2因子)」のバランスが幸福にとって特に重要だと伝えられた。
 
第1因子の生きがい・やりがい・働きがいが満たされると脳内でドーパミンが放出され、快さを感じたり意欲的になる。
第2因子の人とのつながりや感謝で満たされると、セロトニンやオキシトシンが分泌され、リラックスや安心感を得られる。
 
これらの幸せホルモンがバランスよく分泌されることで、相互作用によりたくさんの幸福感を得られるという。
 
シェアタイムでは、LCA国際小学校の教育は子どもたちに主体性を持たせて「やってみよう(第1因子)」を引き出すことを大切にしていることや、日本人は「ありがとう(第2因子)」と言われても、謙虚さから素直に感謝を受け取れない傾向があるが、感謝を丁寧に受け取ることも自己肯定感を育む大切な要素であることが共有された。
 
 
 

ダイアローグカードでウェルビーイングな対話を

ウェルビーイングダイアローグカード

 
 
続いてワークショップで使われたのは、楽しみながらウェルビーイングを高めるトランプ型のダイアローグカードだ。
 
52枚のカードの裏面には、『幸せの四つの因子』に関係する問いが書かれている。
 
 「やる気に満ち溢れているのはなぜ?」
 「あらゆる物事に感謝するための秘訣は?」
 
これらの本質的な問いで対話することで、自分を深く内省するきっかけとなり、これまで気づいていなかった自分に気づくことができる。
 
さらに、参加者同士で答えをシェアすることで、お互いを理解し、自分の引き出しも増やすことができる。
 
1on1ミーティングやワークショップなどで、良質な対話をするのに最適なカードだ。
 
 
 

子どもたちの「やってみよう」を引き出す「大人が本気で楽しむ姿」

先生たちによるダイアローグカードをつかった対話が開始された。
 
すると、これまで静かに講義を聞いていた先生たちの表情が一変した。
 
前のめりに聴き、うなずき、満面の笑みで手をたたいて笑う。
 
しっかり話し手と向き合い、深堀りする質問や、活発な意見交換が行われていた。
 
対話そのものを心から楽しんでいる様子で、場は活発な幸福感であふれていた。
 
コミュニケーションを本気で楽しむこの先生たちの授業では、子どもたちは「ありのまま」に「意欲的に」自分を表現できるに違いない。
 
 
LCA国際小学校 HAPPY ワークショップ ダイアローグカードをつかった Well-being な学校づくり
 
LCA国際小学校 HAPPY ワークショップ ダイアローグカードをつかった Well-being な学校づくり
 
 

幸せは育むもの

「幸せは育むものです。幸せについて知ること、幸せについて対話すること、小さな幸せを習慣にすることが大切です。」
 
最後に講義で聞いたこの言葉が印象的だった。
 
ウェルビーイングの原点は、幸せを発見し、その場を楽しむこと。
 
ワークショップでは、大人が本気で楽しむ姿をみせることの大切さを先生たちに教えていただいた。
 
人の話を聴くことが大好きで、ウェルビーイングなLCA国際小学校の先生たちは、まるで旧知の仲のように、ちょっぴり不安な新入生を温かく迎え入れるにちがいない。
 
「聞いて!」と目を輝かせ、覚えたての英語で、一生懸命に先生に伝える角田選手の姿が目に浮かんだ。
 
LCA国際小学校 HAPPY ワークショップ ダイアローグカードをつかった Well-being な学校づくり

普段子どもたちがのびのびと駆け回るLCA国際小学校の校庭にて、温かで表情豊かな先生たちと。

 

LCA国際小学校
〒252-0132 相模原市緑区橋本台3-7-1
TEL:042-771-6131[電話受付時間:月曜~金曜/10:30~17:30]

HP:https://elementary.lca.ed.jp/

LCA国際小学校

 

 

ダイアローグカードの詳細はこちらからご覧いただけます。

Well-Being Dialogue Card

 

(編集・執筆 高橋 宏明