EVOL LOVE

REPORT DETAILSレポート詳細

2022.12.26

ウェルビーイング(well-being)経営とは?メリットと効果について

ウェルビーイング経営とは

 

ウェルビーイング経営とは

ウェルビーイング(well-being)とは、幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態を指す言葉です。

世界保健機関(WHO)憲章では、健康について以下のように定義しています。

 

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。

(公益財団法人 日本WHO協会 訳)

 

ウェルビーイングの概念はビジネスの場でも広がっており、社員が肉体的、精神的、社会的により良い状態で満たされるように組織の環境を整え、企業に関わるすべての人の幸せを目指す経営を「ウェルビーイング経営」といいます。

 

「社員の心身が健康で社会的に満たされることは企業活動にもよい影響を与える」という考えのもと、ウェルビーイング経営は世界的に広まり、近年日本でも多くの企業から注目を集めています。

 

なぜ今ウェルビーイング経営なのか

なぜ今ウェルビーイング経営が注目されているのでしょうか。

それは、人材の流動化、働き方改革、価値観の多様性といった、企業が直面している課題をまとめて解決できると期待されているからです。

・ウェルビーイング経営は社員一人ひとりの仕事への意欲やエンゲージメントを高める手法であり、「やりがい」や「成長実感」を感じられる職場環境をつくることで、優秀な人材の獲得と定着化を実現し、企業を持続的に成長させることができます。

・どのような「働き方」をすればウェルビーイングな状態になれるのかを考えることで、社員の健康と生産性を高める働き方改革を推進することができます。

・企業に関わるすべての人の幸せを目指すウェルビーイング経営は、個人の価値観と多様性を尊重することにつながります。

 

公益財団法人日本生産性本部の調査では、日本の労働生産性はOECD加盟国36カ国中、21位となっています。

ウェルビーイング経営とは

労働生産性の国際比較2019(公益財団法人 日本生産性本部)

 

そして、幸福度と生産性は下記の図のように相関関係にあることが確認されています。これらのことから、日本はOECD諸国の中で幸福度も生産性も低いことが言えるでしょう。

ウェルビーイング経営とは

OECD諸国の幸福度と生産性(ニッセイ基礎研究所)

 

このような状況のなか、社員の幸福感を満たし、企業の生産性を高めて持続的に発展させるウェルビーイング経営が注目されているのです。

 

ウェルビーイング経営のメリット

ウェルビーイング経営とは

 

企業がウェルビーイング経営を実践する主なメリットは次のとおりです。

 

メリット1.従業員満足度の向上

働きやすい環境が整うことで職場の雰囲気が良くなり、社員のストレスが軽減されます。仕事に対するモチベーションやパフォーマンスが向上するとともに、企業への愛着や貢献意欲の高まりも期待できます。

 

メリット2.生産性の向上

心身ともに健康でいきいきと働くことができれば、仕事に対する熱意・意欲を持つ社員が増加します。その結果、欠勤・休職をする社員が減り、企業全体の生産性の向上が期待できます。実際に、幸福感の高い社員の創造性はそうでない社員と比べて3倍高く、生産性は31%、売上は37%高く、欠勤率と離職率が低いということが研究結果からわかっています。(出典:ハーバードビジネスレビュー2012年5月号「幸福の戦略」)

 

メリット3.優秀な人材確保、離職防止

ウェルビーイング経営を実践することで企業のブランドイメージや企業価値が向上し、採用活動において好影響をもたらすことが期待できます。また、社員の幸福度やエンゲージメントが向上すれば、自社への帰属意識や貢献意欲が高まり、離職防止につながります。

 

幸せな社員は、そうでない社員と比べて創造性や生産性が高まり、欠勤率や離職率が低下するという研究結果が発表されています。

 

ウェルビーイング経営とは

 

社員の幸福度向上により企業の業績向上につながる。その結果、企業に関わる全ての人の幸せにつながることがウェルビーイング経営のメリットと言えます。

 

ウェルビーイング経営は企業の生存戦略そのもの

ウェルビーイング経営とは

 

「社員の幸せは大事だけど、それで会社の経営は成り立つのか」

 

ここまでお読みいただいた方の中には、このように思われる方がいるかもしれません。
 
確かに、社員の幸せを重視するあまり、売上や利益が低下してしまっては元も子もありません。
 
しかし、米国における研究結果や、ウェルビーイング経営を実践した日本企業で創造性や生産性の向上、業績を拡大させた事例が多くあるのも事実です。
 
また、幸せを追求することは今や経済界の大きなトレンドとなっています。
 
世界の政治指導者やグローバル企業経営者、知識人などのリーダーが集まる世界経済フォーラム年次総会(通称:「ダボス会議」)で、2021年のテーマに掲げられたのが「グレート・リセット(大いなる刷新)」でした。
 
ダボス会議の創設者であり、「グレート・リセット」の提唱者でもあるクラウス・シュワブ氏は、『グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界』(日経ナショナルジオグラフィック社)という著書を2020年に発表しました。
 
同書で述べられていることを一言でまとめると以下のようになります。
 

「GDP(国内総生産)で幸福を測る時代は終わった。これからは健康や社会で生きるなかでの充実感など形として見えないものを有することが幸福につながる時代になる」

 

また、シュワブ氏は日経新聞の取材に対してこのように答えています。

 

「世界の社会経済システムを考え直さないといけない。第2次世界大戦後から続くシステムは異なる立場の人を包み込めず、環境破壊も引き起こしている。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなった。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」

「日本経済新聞」2020年6月4日朝刊

 

以上のことから、世界のリーダー達が、持続可能な社会のため、人々の幸福を重視していることがおわかりになると思います。

コロナ禍や地政学リスクにより、ビジネス環境はより一層不確実性を増し、企業は変化に対して柔軟に対応していくことが求められます。
 
売上や利益目標だけを重視する経営は、徹底的にムダを省き効率性を追求し、盤石なビジネスモデルをつくる一方で、社員の自主性が損なわれ、想像力やアイデアに乏しい硬直化した組織を生むことがあります。
 
対して、ウェルビーイングや社員の幸福を重視する企業は、社員が創造性にあふれ、仕事への意欲が高いことから、変化に対してみずから対応することができます。

結果として、新たなビジネスの種を見つけ、新しい環境で求められるビジネスモデルを生み出す可能性が高まります。

そして変化への柔軟な対応は、企業の生き残りにつながります。
 
経営学の用語で「ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)」という言葉がありますが、ウェルビーイング経営こそ最大のゴーイング・コンサーンといえるでしょう。