2023.10.25
企業経営の事例とウェルビーイング 朝礼に見る西精工の幸せな改善活動
朝礼に見る西精工の幸せな改善活動
徳島市にある西精工は、自動車、家電、弱電ナットを製造しています。
従業員は250人。チームごとに朝礼を約一時間行うなかで、自分のミッションと一週間の予定の共有、そして今日の改善点等を話し合うことに加え、企業内大学を行うなど、いろいろなことをしています。
驚くべきはホワイト企業大賞でアンケートを取ったときに、90%の社員が「月曜日に出社するのが楽しい・ワクワクする」と答えていたことです。
休日の明けた月曜日には、早くみんなに会いたかったと社員一人ひとりがイキイキ働いている会社でした。
経営理念の唱和と「挨拶」「掃除」「コミュニケーション」
社長の西泰宏氏の話では、推進したことは「挨拶」「掃除」「コミュニケーション」だということです。
西氏が、親の経営する西精工に戻った当初は、挨拶もない、汚い、コミュニケーション不足の会社だったそうです。
二十数年かけて、この三つを徹底しただけで劇的に変化したわけですから、ウェルビーイング経営は難しいようで基本はシンプルなのです。
挨拶をする人はしない人より幸せであるという研究結果もあります。
掃除は、伊那食品工業でもそうであったように、会社や生活環境がきれいになれば心もきれいになるということでしょう。
そしてコミュニケーション。現在は時間制限を設定しない方針に変えられたそうですが、私たちが見学させていただいたときは毎朝一時間程度の朝礼をしていました。
前半は経営理念やミッションを共有する時間でした。例えば、今日は理念のなかに述べられた文章を見ながら、利他について考えよう、というふうに、毎朝勉強するわけです。こうすることで、社員すべてが会社の理念を共有できます。幸せな会社の行う基本の一つだと感じました。
後半は、「今日の改善」に当てられます。全員が今日行おうとしている業務の改善点を発表し、助言し合うのです。私たちが参加したのは、営業と資材の社員30人弱が集まってミーティングしているグループでした。
発表者が「今日行う自分の改善点は、わが社の理念をお客様に伝えること」と発表すると、他の社員から「それでは抽象的すぎる。具体的に何をする」と厳しく問い詰められていました。
発表者の発言に、みなが遠慮のない意見をいい合って、効果を上げられる具体的な改善点に落とし込んでいく。そんな会話が続いていきます。その日の朝礼は、結局一時間を超えるものになりました。
朝礼を通して、全員がまず自分たちの共有する目標や理念をしっかりと確認し、後半では社員各々が今日はどんな新しいことに挑戦するかを明確化しているのです。
仕事というものは、ルーティンワーク化されて「やらされ感」が起きると幸福度は下がるものです。
逆に、毎日自ら改善しているという意識を持って仕事に臨めることは、やりがいとつながりが感じられる職場づくりになっていると感じました。
幸せな会社はイノベーションを起こす
また、幸せな会社はイノベーティブです。
西精工は、西氏が戻った当時、低価格の一般的なナットをつくっていました。
しかし、中国などに進出した会社の低価格に押され、価格競争にさらされて、業界では日本に残っていては生き残れないといわれていたそうです。
そこで西氏は、家族のように社員を大切にする経営に転じるのです。
また製品も、価格競争にさらされている低価格ナットから高品質で自社独自のナットに特化しました。
自動車用や情報機器用など、非常に小さな精密ナットです。
朝礼で見たように、社員が毎日改善提案をしているので、アイデアが研ぎ澄まされ、その結果高品質製品が生まれる。
レッドオーシャンといわれる利幅の少ない市場で他社と戦い低価格化競争に陥るのではなく、自分たちだけの市場、ブルーオーシャンを見つけて社員が生き生きと幸せに働く。
社員が幸せを感じている会社は創造性も高くなる
社員が一丸となって毎日改善提案をしていくのですから、当然高品質のナットもつくれるわけです。
こうして見てくると、社員を幸せにすることは、経営戦略の基幹そのものです。
幸せになれば創造性が上がり、高品質製品を生み出して利益が上がる、という好循環が達成できるのですから。